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1 風吹けば名無し

――なぜ関西で阪神タイガースの人気が高いのか。

 ◆答えは二つあると思う。

 まず、一つ目には阪神がセ・リーグに所属し、東京に拠点を置く読売ジャイアンツと戦う点を挙げたい。大阪は東京にコンプレックスがある。
1960年代までほぼ同じ経済規模だったが、64年の東京オリンピックと東海道新幹線の開通で、大阪は「第2の都市」になった。大阪が東京に対抗しようとする中で、タイガースが象徴的な役割を担うことになったのではないか。

 ――二つ目は何か。

 ◆関西に中小企業が多いことだ。東京に大企業の本社が移り、関西の人々の多くは中小企業で働き、職場の環境や人間関係に強い関心がある。
阪神タイガースはフロント・親会社、監督、コーチ、労働者としての選手と、複雑な人間関係がある。スポーツ紙は阪神の「職場」やトラブル、裏話などの報道を好む。ファンは自分の職場でのフラストレーションを阪神と結び付けるのだ。
「島耕作」のようなサラリーマン漫画の人気があるのも同じ理由だ。今日の試合の敗戦は誰に責任があるかは、会社で仕事の結果に対して責任を問われるのと似ている。

 ――阪神タイガースを研究しようと思ったきっかけは。

 ◆最初はそのつもりはなかった。日本社会におけるスポーツの役割に関心があり、人気が高い野球を扱おうと思った。巨人の研究は既に多く、関西を選んだ。
研究を始めた90年代半ばは阪神大震災直後で、オリックスにはイチローや監督の仰木彬がいた。
近鉄は野茂英雄が退団した後だったが、藤井寺球場は魅力的だった。阪神を含めた3球団を比較しようと考えた。

 大阪の天六(天神橋筋六丁目)にアパートを借りた。まず驚いたのは、地下鉄御堂筋線に乗ると、半分くらいの乗客がスポーツ紙を読んでいたことだ。
1面はすべて阪神タイガース。居酒屋に行っても客は阪神の話ばかり。なぜ関西では阪神にばかり関心が集まるのかと疑問が湧いた。

 ――他に阪神ファンの特徴はあるか。

 ◆東京のサラリーマンはスーツでスタジアムに来て、ユニホームに着替えるが、阪神ファンは梅田駅で既に着替えている。
たとえ負けた試合でもユニホームを着続け、最後まで応援したファンとして自分自身を誇っているように見えた。

https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20190801-00000018-mai-soci